大植氏の指揮はいつもながら明晰

大植氏は、いつもに増して打点のはっきりした指揮で、縦のリズムをガチッと刻ませていた。その結果低弦と打楽器のリズムがゴリゴリと耳につくのだが、それが一種パラノイア的な趣向を感じさせるというか、何か得体の知れない苛立ちが蠢いている雰囲気をかもし出していた。
音楽全体の流れとしては、部分ごとに大きくテンポ設定を変え、騒ぎどころではこれでもかとばかりにオーケストラを煽り、陶酔的なフレーズでは一瞬音楽が止まったかと思えるようなスローモーションを使う。まさに「ああ、いま自分はマーラーを聴いている」という満足感に満たされたとでも言うか。