弱音で攻める大フィル

なんとそのマ・メール・ロワ、大植氏と大フィルは弱音の表現力でアグレッシブに攻めてきた。緊張感に溢れる最弱音の中で、弦も管も微妙な表情の変化を表出して見せる。ラヴェルの繊細な管弦楽の響きが、息をのむような注意深さで再現されていく。おお、こりゃすごいぞ、と先週の演奏会とは違う驚きで興奮してしまった。
私が大植&大フィルのコンビを初めて聴いたのは、大植氏が常任指揮者に就任してから2回目の定期演奏会だった(演目は幻想交響曲だったと思う)。そのときの感想は、大植氏の指揮テクニックとそれに懸命に食いついていく大フィルの熱意に圧倒されながらも、「でも、指揮にオーケストラが充分には反応しきれてないみたいだなぁ」というものだった。特に、指揮者の要求に応じて音量は大胆に揺れるものの、その音量の大小が表現としての大小にいまひとつ繋がっていないのでは、という印象をうけたのだ。
しかし、大フィルの熱さを見ていると、きっとそんな課題をこのコンビは乗り越えていくに違いない、その変化の過程を私も見守りたい、と思ったのが、私が大阪フィルの定期会員になった最も大きな理由のひとつだ。
マ・メール・ロワの演奏は、数年前のそんな私の思いに対する、大植&大フィルの明確な「答え」だった。