サービス精神の塊、シモノフ氏

なんとアンコールは3曲もあった。白鳥の湖から「ワルツ」を演奏した後、なぜかドヴォルザークのスラブ舞曲を2曲。最後の一曲の前に、指揮台の前で懐中時計を取り出し、時間を見てから聴衆に向かって「まだ大丈夫」と頷いて微笑んでみせるサービス精神もお見事(そのとき、すでに夜の9時を遥かに超えていた)。どうやらスラブ舞曲は予定外のアンコールだったらしく、楽団員はシモノフ氏の一声であわてて楽譜を譜面台の紙束から引っ張り出していた。
「でもシモノフさん、今日のコンサートの副題は『チャイコフスキーの夕べ』なんですけどぉ…」
大音量でズンドコズンドコとスラブ舞曲が演奏される中、私は心の中で苦笑していた。